お前に拒否権はない

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元帥の部屋の前にたどり着いたあたしが息を少し整えて部屋のドアをノックすると、部屋の中から元帥の声が聞こえた。口調はいつも通りの淡々とした口調だったけど、本当にピリス班長の言うとおり機嫌がいいのかな?というか、今思えば何で機嫌がいいんだろ? 「対人班所属、春咲朱音です。遅れてすみません」 「……入りなさい」 ……やっぱり、いつもの元帥だ。失礼します、と声をかけてからドアをゆっくり開けて中に入ると、部屋の奥に置かれた重厚な造りの仕事机の上で腕を組んでこちらをじっと見つめてくる元帥が窓の光をバックに座っていた。 前にそれだと暗くて仕事しづらくないですか?と質問したら、無言で睨まれたことがあったっけ?やっぱり、あれから変えていないのだろうから、よっぽど気に入っているんだろうな……。 そんなことを考えながら黙ってドアの前に立ち尽くしていると、元帥の威圧感が少し増えたような気がする。さっさと済ませたいのは、元帥だって同じはずですよね……。それが、何事よりも仕事を優先させるカーネの元帥・一円ホムラさんだもの。 ここに入った直後に行われた全体への挨拶で初めて見たときから、どうしても苦手なんだよな……元帥のこと。それを言うなら、司令官の露草さんにも同じことが言えるんだけど……あの二人って、人を近づけさせないオーラのようなものを持っているから近寄りがたくて怖い。 例えるなら、蛇に睨まれた蛙になった気分になるような感じ。それなのにピリス班長は、よくその二人とごく普通に接しているから尊敬しています。 そんなことを頭の片隅で考えながら元帥の机の前まで進み出たら、自然と背筋が伸びて体に余計な力が入ってきた。こうして近づくと、やっぱり怖い!!それなのにどうして、他の部署の先輩方(女性)は「元帥は素敵な男性よ」だなんていうんだろ? これも噂だけど、以前は元帥と司令官にそれぞれファンクラブがあったと聞いたことがあったっけ……。さすがに、これは嘘であって欲しい。そんな組織が実際にあったら、想像するだけでも充分恐ろしい結果を生んだはず……。それ以前に、物好きな方もいるんだ……としか言えない。 「元帥、あたしに何か用ですか?」
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