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「……問題はないようだな」
「も、問題ならありますって!あたしはドラゴのテリトリーになんて、一度も行ったことないです。それなのに行かせるんですか!?」
「だからこそ、行かせるのだ……。ついでに、そのドラゴ嫌いも直してこい」
「……それが本音ですよね?」
やっぱり、それが主な原因か……。さすがにこればっかりは、いくら元帥からの命令だからって「はい、わかりました」と二つ返事で従えない。そもそもドラゴ嫌いの以前に、自分達のテリトリーから出て他の組織のテリトリーへ行くわけだから、これにはいろいろ危険とかが伴う仕事のはず。だから、あたしじゃなくても嫌がる仕事のはず。
いくらそれが協力関係を築いているドラゴであっても、その危険性が全くないわけじゃいない。誰に任せようと、二つ返事で請けおえる人は早々いない。でも、元帥だってそのことくらい分かって言ってきているはず。つまり……。
「……これはすでに決定していることだ。その書類を受取った今のお前に拒否権はない」
やっぱりそうきたか!あたしに何も言わなかったのは、有無を言わさせずこの仕事を請けさせるため……。よく見たら、この書類は正式な指令書の形式もとっているから、公的な拘束力もある。つまり、何の権力も持たないカーネの一職員であるあたしにはもうどうすることもできない。うぅぅ……やられた……。
「分かったら、その書類を持って仕事に戻れ。以上だ……」
「……はい。失礼します……」
もう、これ以上何を言っても無駄な足掻きだってことくらい分かってる。だから、もう覚悟を決めるしかない。諦めと絶望に満ちたどうしようもなく暗い気分になったあたしは、その問題の書類を大事そうに抱えて元帥の部屋を後にした。
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……これが現在あたしの落ち込んでいる主な原因であり、ことの発端。極度の緊張から開放されたからという理由もあるけど、何よりも見事にはめられたことが悔しくて涙目になっていたあたしに止めを刺したのは元帥とこの仕事ではなかった。
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