お前に拒否権はない

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雪那さんと別れ、廊下をしばらく歩いていると今一番遭遇したくない一団が進行方向から現れた。今あたしが遭遇したくなかった一団……それは、戦闘班と司令官というカーネ最強(最凶)集団。 ……とはいっても、こちらへ向かってくるのは司令官を含めても三人。戦闘班の班長・ユスティーさんとその部下のフランさんが司令官の後ろで何か話をしていたけど、一人先に歩く司令官は視線だけで人を殺せるんじゃないかってくらい鋭い目つきのまま無言で淡々と歩いてくる。 司令官達の機嫌が良いのか悪いのか分からないけど、触らぬ神にたたりなしがここでの基本だともう悟ってるから、変に視線があって何か言われるのだけは避けたい……。 戦闘班は荒々しい人が多く、それを束ねる班長も班の構成員と同様。司令官は戦闘時に指揮をとることもあって、戦闘班の人とよく見かけることがあるとかないとか。 ……どちらにせよ、他の班の人間が下手に関わるとろくなことにならないってことだと思う。それは、バレンタインの一件ですでに実証されているから。 いつもお世話になってるから……といって、クッキーを大量に焼いて持ってきたら、あたしの所属する対人班のみで振舞われるはずがいつの間にか他の班にもクッキーが回っていた。 そして、それを知ったあたしが呆然と立ち尽くす目の前であの司令官がクッキーを食べてうまいと褒められた時なんか、その場から逃げに逃げれなくて怖かった。その上何故か後日、司令官から直接鉢植えのチューリップを無言で押し付けられた時は、恐怖のあまり泣きそうになるのを我慢したのもいい思い出のような気がする……。実際には、ちっともよくない思い出なんだけど。 壁を見ながらそんなことを悶々と考えているうちに、その三人の靴音はどんどんこちらに近づいてくる。それと同時に、心臓の鼓動の音がやけに煩くあたしの耳に響いてきて、余計に怖くなってきた。先頭を歩く司令官からすれ違いざまに、そんなことをしているなら仕事をしろ、と冷たく言われたけど、それで終わるならそんなことを言われてもいい。むしろ、早く通り過ぎてくれれば、早く仕事に戻れるし! けど、現実はそこまであたしに甘くはできていないらしい。
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