3544人が本棚に入れています
本棚に追加
/325ページ
「気をつけなよ? 女の子なんだから」
「……ハイ……」
しゅるしゅると、しぼんでいく私の声。
恥ずかしい。てゆーかみっともない。ダサい。終わってる。
落ち込んでいる私に落ちてきたのは、直井くんがくすっと笑う気配。
「じゃ、部活あるから。またね」
「あ、う、うん……! 頑張ってね!」
「ありがとう。じゃ」
絞り出した応援の言葉に、彼は手をあげて応えてくれた。
その姿すら様になる。
本当に、ヒーローみたいな人。
私なんかにも声を掛けたり笑ってくれたりするのは、彼が優しいからだ。
それ以上でも、それ以下でもない。
直井くんにとって、私はただの、圭吾の、幼なじみ。……(仮)だけど。
期待の芽すら生まれない、この状況に、私は溜息をついた。
.
最初のコメントを投稿しよう!