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椅子から立ち上がった圭吾は、私の頭をそっと撫でた。
「……楽しみにしてて、欲しいんだ」
柔らかく響いた声に、私の心にあった切なさがしぼんでいく。
圭吾は、これまでにないくらい優しい表情をしていて。
私の視線をまっすぐ受け止めて、ふっと淡く微笑んだ。
「ちゃんと、亜子の期待に応えられるように、頑張るから」
私の、期待?
それって……何? どういうこと?
「もうちょっと、我慢してて」
そう言った圭吾は、最後に私の頬をするりと撫でて、机に戻っていった。
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