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「いーよ。期待、してて」
圭吾の柔らかい笑顔が、胸に突き刺さる。
なんだか少し楽しそうにも見えるヤツに、私はこみ上げてくるものをこらえるので精一杯だ。
やばい。もう、どうしよう。
本気で泣きそうなんだけど。
ぎゅっと唇を噛み締めると、圭吾は苦笑した。
「気をつけて帰れよ」
「……うん」
「また明日な」
「……うん」
懸命にこらえた涙を落とさないように、軽く頷いて私は圭吾の部屋を出た。
圭吾の家を出て、私の家に入って、自分の部屋にたどり着くまで。
私はずっと、しかめっ面だったに違いない。
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