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「これ、圭吾(けいご)くんにって。里美(さとみ)さんに頼まれたの」
「……ええ~……!?」
嫌だ。ってことを少しも隠さずに、私は頬を引き攣らせる。
なのにお母さんはまったく気にせず、私に包みを押し付けた。
「お昼がなかったら困るでしょ、圭吾くんだって」
「……なんで、私が……」
「何を今更。さ、早く行きなさい、遅刻するわよ」
「お母さんのせいじゃんっ!」
もうっ! と膨れてみても無駄だ。わかってる。
私はせめてもの意地で振り返らずに玄関を飛び出した。
後ろから「圭吾くんによろしくねー」なんて、気の抜ける声が聞こえてくる。
「……っとに、あのバカっ!」
悪態をつきながら、私は駅へと走った。
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