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「ってかさ、 何のために監視されてるんだよ」 慶太が、リクにつっかかる。 「わかんねぇ。 暴動が起こらない為かもしれない。 でも、誰も逆らったりしねぇんだよな。 諦めてる……… っていうか、みんな無気力なんだ」 「金もない、自由もない。 不味い飯、食わされて 週に一回、新しいゲーム与えられて 喜んで、遊んでる。 それで、みんな満足してるって事だよな?」 慶太の話しに、リクが頷いた。 「あ~! 誰一人、逆らわない。」 「で…… 何処、見て歩いたんだ?」 「自転車で探し歩いた。あちこちな。 でもさ、途中で何を探してるのかわからなくなったんだ。 だってそうだろ? デパートで迷子になった子供なら、デパートの中に親はいる。 でも…… 見当もつかないんだ。 この場所が 俺たちが住んでた世界の今なのか、未来なのか。 何処が出口かなんて 探せる訳ない。 世界が違う。 多分異次元…… 異次元に迷子だよ。 闇雲に自転車で走り回るのが、 なんだか馬鹿らしくなってさ。 それきりだよ」 慶太は頷いて、黙り込んだ。 「それきり、奴隷になった」 二人は、黙り込んでしまった。 慶太はポケットから煙草を出して、 肩を竦めてリクに言った。 「残り三本…… これで禁煙だよ」 「その代わりに、楽しいゲームが、毎週配信されるよ」 投げやりに言ったリクに慶太がまた話し始めた。 「俺一人じゃないんだ。一緒に来た女の子がいる。 やっぱり、あそこで働いてた」 「他に働く場所ないからな」 「今日食料、配給されただろ?あそこで働いてた奴らは?」 「ランクが違う奴らだよ。バッチ気づかなかったか? 青いバッチは 俺達を監視するやつらだよ」 リクがテーブルの上で携帯をくるくると回しながら答えた。 「意味わかんねぇ」 また黙り込んでしまう慶太にリクが ポツリと言った。 「もう帰れないと思う」
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