IIXI

3/11
375人が本棚に入れています
本棚に追加
/397ページ
長い廊下を歩いて 徹の部屋のドアを開けた父親が 慶太とリクを見て言った。 「ここが、徹の部屋です。 あの時のまま、 何もいじらずに、そのままにしてあります。 自由に見てください。 何か今 飲み物を持ってきます」 二人は会釈して 父親を見送ると、顔を見合わせた。 慶太が徹の机の上にある教科書を ペラペラとめくる。 「新品同様だ。 全く勉強した形跡もない。 こんな勉強、あいつには くだらなかったんだろうな」 「なぁ~慶太、見てみろよ」 本棚に並んだヒットラーの本を リクが手にとって慶太に見せた。 「この本棚、 ほとんどが ヒットラーの本で埋め尽くされてる。 全部、関連書だ。 よくこれだけ集めたな。 難しい本ばっかりだ」 ドアが音もなく開いて 徹の父親が 小さな折りたたみのテーブルを広げると トレーに乗せたコーヒーを置いた。
/397ページ

最初のコメントを投稿しよう!