IIXI

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「あの…… 一つ、伺ってもいいでしょうか?」 ずっと泣いていたリクが 徹の父親を見て言った。 「徹くんが あっちの世界で ぼくに教えてくれたんですが なんだか 街を作れる玩具を持っいるって言ってたんです。 その中に、 大切なものが入っているんだって ひどく気にしていたんです」 父親が暫く考えてから リクを、見て答えた。 「ひょっとして あれの事かな? 半年ほど前に 徹の奴 ちょっと病気をしましてね。 その時、 病院で貰ったって言ってたんです。 確か このクローゼットのなかに」 立ち上がった徹の父親は クローゼットの扉を開けて 中を探し始めた。 「暫く遊んでたんですよ。 徹は小さい頃から 玩具に全く興味がなくて 珍しく夢中で遊んでいたんで 覚えてます。 おかしいなぁ? 確かここに……」 リクと慶太は 顔を見合わせた。 「それは 30センチ四方の黒い箱に入っていて 中に小さな人形が入ってるんだって 徹くんが言ってました」 父親は クローゼットの中に首を入れて ごそごそと探している。 「そんなんでしたよ。 作ってましたよ。 ミニチュアの街を。 動物なんかもその黒い箱に たくさん入ってて あいつ動物が好きで だから 余計に気に入ったんだと思います」 クローゼットから顔を出した父親が 肩を竦めて言った。 「やっぱりないな…… いったい、 その玩具に何が入ってたんですか?」 「すいません。 僕にもわからないんです。 ただ 大切なものだって凄く気にしてたんで もしあるなら お父さんに 捨てないでいてあげてくれればって 伝えておこうかと……」 「そうですか。 またゆっくり探してみます。」 徹の父親が 弱く笑って言った。
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