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「コーヒー飲むか?」 頷いた慶太を見て、リクが立ち上がった。 部屋を見回す慶太に向かってリクが声をかけた。 「珍しいもんなんか何にもねぇよ。 最低限、人間が生活出来るものしかない」 慶太は、キッチンでコーヒーを作るリクを見て頷いた。 「テレビもない」 「あ~!娯楽は、唯一携帯ゲーム。 飽きさせないように週に一度は配信されてる。 後は、施設にある本ぐらいだな。新聞もねぇよ」 コーヒーをテーブルに置いたリクが、 コタツに潜り込んだ。 「いつ来た?」 昼と同じ質問を、 リクが繰り返した。 「リクもなんだよな? つまり……ここに」 言葉を詰まらす慶太に、リクが壁に寄りかかってふっと息を吐く。 「半年」 「いったい、ここなんなんだ?」 「わかんねぇよ……」 そう答えて黙り込むリクに、 慶太は食らいついて言った。 「帰れないのか?」 「だから半年もここにいる」 「昨日居酒屋で、酒飲んだ帰り道、いきなり地震がきて。」 「地震か…… 俺と同じだ」 「探さなかったのかよ」 「ばかいえ。探したさ。 一人で夜中に、探し回ったよ。 見つかると思うか? タイムマシーンで来たとかなら、まだ救いがある。 ある日突然、この部屋で寝てたら地震がきた。 地震が収まるまで手で頭覆って部屋の隅にいたんだ。 目を開けたら 家具も何もかも変わってた。どうやって出口探すんだよ」 慶太は黙り込んでリクを見つめた。 「墓場だよ。 ここは、人間の墓場」 「強制労働させられて、家畜同然の不味い飯 分け与えられて。 馬車馬みたいに働かされる。 逆らったら刑務所行きだ」 「刑務所?」 「ああ。1ヶ月に一度減点ポイント計算される。 お前も、今日減点食らっただろ?」 「刑務所ってどこにあるんだ?」 「わかんねぇ。 集計されて100ポイント超えた奴は、連れていかれた」 テーブルの上に両肘を置いて頭をかきむしるリクが話を続けた。 「それきり、帰ってこねぇ」
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