第15話 増成誓太編

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「嫌、……イヤ、……嫌、嫌、嫌、イヤや!!」  震える両手で頭を押さえ、詩織は「嫌、イヤ」と繰り返す。呼吸が乱れ、高い声はもはや悲鳴のよう。 「詩織!?」  前かがみに崩れ落ちそうになる詩織の身体を、強引にこちらに向かせて抱きしめた。  とうとう声をあげて泣き出した詩織を。  こんな形で。  こんなふうに。  抱きしめることになるなんて。  本来、この役目は、俺の親友であり詩織の恋人であるコウジのものだ。  この部屋は、コウジと詩織の帰ってくる部屋なんだ。  なのに、肝心のコウジの姿がない。  コウジは夏に交通事故を起こした。それで左手を負傷し、ギターを弾くことができなくなってしまった。  コウジのギターへの熱意を知らないわけではない。  今も、この部屋の隅に、黒いギターケースが捨てられずに残っている。あのなかには、コウジが大切にしているギターも収まっているはずだ。
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