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とある地方のひなびた村。
ここにとんでもない悪女がいまして……
悪女と言っても、なにも人を殺めたり、ものを盗んだりってわけじゃない。キザな言い方をすりゃ、男の心をちょいと盗んで玩ぶ……言わば「小悪魔」な女という奴です
この小悪魔。そういう女性にご他聞なく、なかなかの器量よし。ハッと目を見張るようなスラッとした鼻立ちに、潤んだ瞳。抱いたらポキリと折れそうな、スミレのような可憐な姿……
ただ、そんな田舎では誰もが目を引く美人でも、田舎を一歩離れて、生き馬の目を抜く大都会に出てしまうと、苦労に苦労を重ね………るかと思いきや……
その美貌をいかんなく発揮し、近付いてくる男をコロリコロリと手玉にとり、ブランドものを身にまとい、毎晩ワインだシャンパンだ……それはもう毎晩が贅沢三昧。存分に都会の夜を謳歌いたします
ところが……月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也と申しましょうか……。次々と男を玩ぶものの、誰かの嫁に落ち着くわけではなく放蕩するような毎日
気が付けば月日だけが過ぎ去り、自慢の美貌にも翳りが出始めます
すると
美貌だけをよすがに生きてきた人生。頼れるものがなくなりますと、一気に風向きは悪くなります
まるで、肌の張り艶がなくなるのと時を同じくして、生きることにも張りがなくなっちまいました
そんな、都会に疲れた小悪魔な蝶が、生まれ故郷の寂れた田舎に舞い戻って来たのです……
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