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「りっちゃん。東京はどうだったんだい。やっぱり、街で芸能人とか会うのかい?」
「……第一声がいきなり田舎モンだね。他に何かいうことないのかい」
「いや、でも俺、東京のことなんて何も知らないし」
「ムッチン、あんた、ここのこともよく知らないじゃないか」
「やっぱり東京じゃ、円広志が散歩してたりするのか」
「やっぱバカだね。それ大阪だよ。東京に円なんていないよ」
「じゃ、やしきたかじんが夜な夜な飲み歩いてんのかい?」
「それも大阪………ってか、死んじゃったよ!相変わらず、なにも知らないね、本当に」
「じゃ、じゃあ……」
「分かったよ。私はあんたみたいにバカじゃないんだから。無理に話を見つけなくたっていいよ。ムッチン、私と話がしたかったんだろ?」
「う……うん」
さすがは東京の男を手玉にしていた小悪魔。男の気持ちを察することには長けています。もちろん、ムッチンのほのかな恋心も子供の頃からとうに気付いちゃいますが、こんなバカと付き合えるか、と。そんなたかをくくっていたのです
「……りっちゃん、なんで村に戻って来たんだい?」
……バカの素直な言葉に、勝ち気な律子もふと返す言葉につまります
その日その日を無駄に過ごし、何をなし得たのでも手に入れたわけでもなかった東京暮らし……ふとそう思い、人寂しくなって帰ってきた……
なんて、バカに話してもしかたない……そう思うと、何も言葉なんて出やしないのであります
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