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そんなやりとりを皮切りに、することがない律子の元を、毎日のようにムッチンは通いつめた。所詮はバカだから、大した話も成り立ちはしないんですが……
なにせ都落ちして、肌にも艶がなくなった性悪女。他に訪ねてくれる者もありません。次第に、ムッチンが訪ねて来ない日は、彼が来るのを待ち遠しく思うようになってきました
そんなある日……
ムッチンが律子の元に瞼を腫らしやって来ました
「なんだい?ものもらいかい?」
「いや、何も困っちゃいねえよ」
「いちいち会話が通じないね。結膜炎かい?」
「ケツに膜……」
「予想通りだね。ま、いいや、眼医者……なんかこの村になかったね。なんか薬挿したりしてんのかい?」
「ああ。なんだいこの目のことか。昔から俺は薬がいらねえらしいからつけてもらったことがねえんだ」
「まさにバカにつけるなんとやらだね……ちょっと待ちな」
小悪魔もさすがに優しい一面が芽生えたのか……いえいえ、暇な毎日なもんだから、ちょいと子供心に返ってイタズラしたくなっただけでした。なにせ、奥の部屋から律子が持ってきた薬というのは
……タイガーバームでありました
「この東京で流行ってる軟膏を塗れば、ものもらいなんてすっかり元通りだよ」
「お。ありがたい。こいつを塗ればいいんだな」
ムッチン、素直に信じちまいます。さっそく手につけ、瞼にタイガーバームを……
「滲みる。滲みる。くぅ~。スッとして、こいつは効きそうだ」
そう言って泣きながらタイガーバーム手にして帰っちまった
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