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冷たい雨が風と共に窓を強く叩く。
霙に変わりそうな音をさせながら、不規則に、延々と。
夜半も過ぎ、そろそろ寝てしまおうかと思っていた矢先、屋敷に突然の訪問者が現れた。
そいつはもう冬だというのに、全く季節感の無い白いローブをすっぽりと頭から被り、何処からやって来たのか随分とびしょ濡れだった。
「アイ! アイ、起きているか!? 大変なことが起きた!」
相変わらずノックもせず部屋の扉を開くその癖を何とかしろよ、と心で突っ込みつつも、パンツ一枚でベッドに片足を突っ込んだままの間抜けな姿勢で俺は答えた。
「なんだよ。僕はもう寝たいんだよ。明日じゃダメなのか」
「リシンシさんが、消えた」
「え?」
「だから、リシンシさんが消えたんだよ。一瞬だ。一瞬目を逸らしただけだったんだ。なのに消えたんだ……」
「三分で用意する。待ってろ」
バクは力なく頷くと、近くにあった椅子に腰かけ、両手で顔を覆った。
「どうしてリシンシさんなんだ……」
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