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「ねぇ、平民と王族って違うのかしら?」
宮殿のテラスから、少女が満天の星空を見上げている。
「それは違いますね。」
彼女と同じ年くらいのメイドがきっぱりと答えた。彼女は寂しげな顔で腰まであるブロンドの髪をなびかせて振り返った。
「どこが違うの?同じ姿で同じように話せるし、動けるわ。」
「そうですね、身分とか、教養とか…。お召しになられるものも違っていますでしょうか。」
メイドは少し悩んでこう答えた。彼女は再び星を見上げる。
「あの人は、私と同じものを身に付けているけど?」
挑みかかるように彼女は言った。青い石のついた――セイルと色違いのブレスを掲げながら。
「あの人…にございますか?」
まだ雇われてそんなに経ってないメイドが七年以上も前の事を知っているはずがない。なのに、彼女はわざと言ってみたのだった。
「そうよ。あの人…。あ、そうだ。あなた上流階級だけど平民出身よね。」
「ええ。そうでございます。」
彼女は少し決意を固めてから聞いてみた。
「今から話すこと、誰にも言わないでね。」
「はい。」
「…セイルって人知っている?私と同い年くらいの。」
「あの、貴族や兵士に悪さをしながら兵士団に入ったセイル・アレードですか?」
彼女はため息をついた。
「違うの。あんな乱暴で城の者たちを馬鹿にするような人じゃない。もっと優しくて、素直でかわいいくらいの人よ。」
「はあ、存じ上げませんねぇ。その方がどうかされたのですか?」
彼女は返答に納得いかなかったのか、メイドから顔をそむけた。
「知らないならいい。悪いけどもう一人にして。」
「かしこまりました。」
メイドを半ば追い出すようにして、ようやく彼女は一人になれた。
(なんで…。どうして名前を挙げればあいつの事ばかりなのよ!)
彼女――ルシアは一度、憲兵に取り押さえられた彼を見たことがあった。
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