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三年前
「何事ですか?」
私は深夜、城の裏口がやけに騒がしかったので見に行ってみた。近くにいた執事に話しかける。
「今まで城の兵士にいたずらしたり、悪質な富豪から金を巻き上げたりしていたセイル・アレードと言う者が捕まったのです。」
(セイル?)私はその名前にのみ反応し、ドアの隙間からのぞいてみた。
久々のその名前に胸が高鳴る。
そこにいたのは、
「なぁ~おっさん。痛いんだけど、離してくんねぇ?」
何とも軽い口調で話し、手を後ろ手に縛られた少年だった。
おまけに兵士からの信望も厚いリグルス団長をおっさん呼ばわりしている。
「黙れ、離した所で逃げ出すんだろうが。おまけにたらいヒットまで仕掛けておいて!」
そして、彼は余計に引っ張られている。
あどけなく可愛らしかった顔は別人のように大人びて、背も高くなっていた。
最後にブレスを渡してからしばらくすると、彼は行方がわからなくなってしまったが、
まさかこんな――罪を犯して捕まった状態で再会しようとは。
彼は私の事には気づいておらず、憲兵達となにやら言い合っている。
本当はこんなこと思ったらいけないけど、四年振りに彼に会えた事が何より嬉しかった。
「何故あんな、他国からの使者である公爵婦人を落とし穴にはめるような事をした?」
「うるせえ!お前らが平民やそれ以下の奴を嘲笑うからだろうが!」
彼は身動きが取れなくとも力の限り反発している。
「口を慎め!此処にいらっしゃるのはみな尊い王族や貴族ばかりだぞ!」
一人の若い兵士が彼の頭を掴みながら怒鳴る。
彼は負けまいとその兵士を蹴飛ばした。
兵士はあっけなく一発で倒れる。それを見下ろすと、彼は怒鳴った。
「貴族がなんだってんだ。
人の犠牲の上に立ってる奴が尊いだぁ?はっ、笑わせる。
おまけにてめえらは自分の代わりに苦しんでる奴等を嘲笑うんだ、醜いくらいじゃねぇか!」
周りの貴族達を見回しながら叫んだ言葉は大いなる反感を買った。
それと同時に、彼の言う『犠牲の上に立っている』自分の心にも深く刺さった。
こんなの、セイルじゃない。
こんな怖い人じゃ無かった。
それなのに――今の彼に何が起こったというのか。
私の友達だった、あどけなかった『彼』の姿はどこにも見当たらなかった。
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