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「…いい加減にしろ。」
リグルス団長が静かに諭す。
「確かにお前が言うように、貴族の中にも不当な事をしている者はいる。
だがな、これが正当なやり方か?違うだろ。」
「…。」
彼は黙ったまま団長を睨むと、そのままどこかへ連れて行かれた。
数年振りに見た彼の姿は酷く痛々しかった。
貴族達は口々に彼を罵っていたのだった。
翌日、私はリグルス団長の元を訪れた。質素な部屋でくつろいでいたが、彼はあわてて身なりを正す。
団長という役職ではあるが、リグルスはまだ若いので厳格でありながらも親しみやすさがあった。
「姫様が私なんぞに何のご用で?」
兵士たちが居る場所に私が行ったのは初めてだったので、私も緊張していたが相手の方が酷かった。
…足元が震えている。
「あの…昨日の晩に捕らえられた人は?」
恐る恐る、窺うように聞いた。
「は、あの者は監禁しております。どうかなさいましたか?」
監禁かぁ…彼は一体どれ程の罪を重ねたのだろうか。
私が解放しろと言ったら出来るかなあ。
彼に会えるとは思わないが、ずっと想い続けたのだから、せめて救いたかった。
「そう言えば、あの人、腕に何か着けていませんでした?」
まずは捕らえられたセイルという人が、『彼』かどうかの確認からだ。
もしそうなら、最後に渡したプレゼントであるブレスを着けているはず。
最低でも持っているはずだ。私は自分の腕の――彼とお揃いのブレスを付けた手首を軽く握る。
「何ですと!まさか爆弾?」
私は思わず溜め息をこぼしそうになった。
リグルス団長がこういった反応なのはきっと彼自身が今まで色々しでかしたのだろう。
「いえ、ブレスとかです。」
「ああ、それなら左手に黒いリストバンドと右手のグローブくらいです。
持ち物を検査しましたがそのようなものは、見つかりませんでした。」
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