レイラルク王宮最下級兵士 セイル・アレード

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 「…きろ。」  知っている奴の声が、微かに頭に響く。 「おい!起きろ!セイル!」 「あ?」 「『あ?』じゃねぇよ。集会に遅れるぞ!」 俺は寝ぼけた頭を懸命に働かせる。 「………。」 時計を探そうとしたが見つからない。つーか、あれ?ベッドから上半身だけ落ちているし。 そこへガスッ!と目覚まし時計が頭部に投げつけられる。 「…痛ってえ。」 俺はようやく起き上がると目覚まし時計を拾った。 そして文字盤に視線を移したその瞬間から支度を始めた。 薄情にも俺を起こすだけ起こして、さっさと部屋を出て行ったのは、同室のライザー・ノースだ。 支度をしている間にざっと説明しよう。俺、セイル・アレードは今、この国の兵士?みたいなのをやっている。 つっても見習いだな。平和ボケするくらい平和なこの国で戦争なんてないため、下級兵士(俺)は剣の訓練か雑用しか仕事がない。 そんでまあ、これからむさくるしい兵士達が集まって何かするわけだ。 支度を終わらせると、俺は二階のテラスから飛び降り、集会所へと走った。 ヤベェよ!兵士団の団長が話を始めてるよ!あの人を怒らせるとめんどくさいんだよなぁ。 「アレード七等兵!」 ギクッ!大勢の兵士たちにこっそり紛れ込もうとしたが、案の定バレた。団長の大声に俺は肩をすくませた。 百メートル位は距離があるのに、団長 リグルス・マークは1ミリの狂いもなく俺を睨む。 熱血漢で有名で、そのせいなのか、精悍な顔立ちをしているのに結婚できない人だった。 周りの兵士達はにやにやしたり、呆れたりしている。 ちなみに兵士団はこの国には5つあり、とにかくエリートの第一団。 騎馬戦を主体とする第二団。 主に弓や銃、大砲を扱う第三団。魔術や呪術などを駆使する第四団。 そして剣士や槍使いが多く白兵戦を主戦とするのが第五団だ。 俺はこの平和な国では雑用として最もこき使われていると言っていい第五団に入っている。 大体一つの団に千人は所属しているが、そのなかでなぜ俺みたいな低ランクの兵士を団長が覚えているのかはまた話すとしよう。 「遅刻してすいませんでしたーっ!」 仕方がないから俺は団長に向かって叫んだ。 「アレード七等兵は後で団長室へ来るように!」 え、人が謝ってるのに放置かよ!そのまま彼の熱く一部の人の心を打つ長い演説が始まったのだった。
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