レイラルク王宮最下級兵士 セイル・アレード

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そりゃ、きつい。 前もって遅刻を十回したら罰則があると聞いていたが、毎日こなさなければならない雑務がトイレ掃除とは。 ちなみに、その前は家畜小屋の掃除、えさやりだった。どっちにしろひでぇ。 「文句があるならクビでもいいが?」 団長は鳶色の長髪を無造作に束ねながら言った。 「…この冷血人間!普段無駄に暑苦しいくせに!」 「何とでも言うがいい。」   そうして、俺はトイレ掃除に向かった。 頭にはバンダナを締め、エプロンを着てブーツを長靴に履き替える。 担当は貴族の使用するトイレ5箇所だ。 身分制度はこの国では健在で、王族、貴族、兵士、富豪、平民、(その中でもとりわけ貧しい者を貧民と呼ぶ人もいる)の5つに分けられる。 奴隷とかは居ないが、貧富の差はかなりある。 兵士には主に中級以下の貴族や富豪等のやや上流階級の奴等がやっている。 出世すれば英雄ともてはやされたり、収入が増えたりするからだ。 この平和な国で本当に国を守る為に兵士になるひとは数少ない。 そんなわけだから俺みたいな平民(下手すりゃ飢え死に)の奴が兵士になることはかなり珍しいようだ。 そのためか、通り過ぎる貴族たちがジロシロ見ながら横を通っていった。 もう二年も兵士団に居るんだけどな。 「なんで平民なんぞが宮殿に居るのかしら。」 「リグルス団長の気が知れませんわ。」 まあ、こうひそひそ言われるのはいつもの事だ。と、肩が誰かにぶつかった。 「すいません。」 俺は悪くないのだが、(明らかに相手の故意だからだ。)とりあえず謝っておく。 「ふん。気をつけたまえ。お前みたいな奴に触れられると、貴族の血が汚れるのでな。」 パンパンと俺と当たった所を払いながらジジイの貴族が言った。 「は、はい…。」 (てんめぇぇ――っ!このデッキブラシでぶっ刺してやろうか!何が貴族の血が汚れるだ。 そんなんで汚れるならなあ、お前えらが敬愛する姫君なんて俺とハグしたんだから腐りきってるぞこの野郎!) 表面では大人しくしていたが、内心叫びまくっていた。 俺は怒りに任せてトイレまで宮殿の廊下の真ん中をズカズカと歩いてやった。 そんなことをするから目をつけられるだぁ?上等じゃねぇか!
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