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どうやって返答しようと考えているうちに、もう部室が見えてきた。
グラウンドの横を通って部室に行くので、もう練習している姿が何人か見える。
結局何も考え付かない。
無言が続いたが、やがて部室のドアを開こうとする時に徹が口を開いた。
「ま、人の趣味にどうこう言うつもりはありません。誰にも言わないかわりに――」
かわりに?まさか、金をくれと言うんじゃないだろうな。
「今度、女装して見せてくださいね。たしか、あの漫画にも女装ネタがありましたよね」
徹は鼻で笑うように言うと、部室に入ってさっさと着替え始めた。
な、何だこいつ!!
馬鹿にしたような言い方して……腹立つ!
そうか、徹は馬鹿にしてるんだ。僕を笑い者にしようとしてる。
昨日の「誘ってます?」というのも、きっと冗談で僕をからかったんだ。
本当に生意気なやつ……。
「言っとくけど、女装なんて趣味ないからな!」
僕は少しだけ声を荒げて言うと、徹に背を向けるようにして着替えた。
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