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試合の日が来た。
それまでは、徹とは特に関わらないようにした。
また馬鹿にされるのが嫌だったし、とにかく――もう、あのことは忘れたかった。
多分、徹は誰にも言う気はないと思う。
そもそも、馬鹿にしてるような先輩の秘密なんて、何でもこなせちゃう徹が気にかける程のものじゃないんだろう。
試合中は補欠は応援に回る。
だから喉が枯れる。
試合もそろそろ終わりだ。
今はまだどちらも点を入れられていない。
ピリピリした空気が伝わってくる。
「あー……よし、楠木行ってみろ」
顧問の思いがけない発言に、目を見開いてしまった。
やった、ついに僕が出れる時が来た!
ウォーミングアップを済ませて、レギュラーの選手と交代する。
よし、絶対活躍してみせる!
もう徹になめられるなんて嫌だ。
僕だって先輩なんだ、もっと尊敬されたい!
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