第1話

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「先輩?」 ……? 僕は、耳を疑った。 だって、僕の後ろに後輩の徹がいたんだから――。 「ッ、あ!え、あ!?徹!?」 慌てて手にもっていた本を後ろに回して隠すが、ここはBLコーナー。 どう言い訳しようと頭がぐるぐると回っていた。 「先輩、偶然ですね。この辺、家近いんですか?」 と、徹は何事もないように話しかけてくる。あの無表情な顔で……それが逆に怖い。 「え、ああ……うん、まぁ近いよ。徹も近いの?」 掠れた声で対応するも、今のこの状況をどうするのかに気が散ってろくに会話できない。 「近いですよ。てか、何見てたんスか」 冷や汗が止まらない。 僕はもう終わりだ…… これまでの苦労の日々がこんなにあっさり終わってしまうなんて…… それも、こんな僕とは正反対の「出来るヤツ」に見つかって弱みを握られてしまうなんて!
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