第1話

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僕は逃げようとして走り出そうとしたけど、徹に強く腕を引かれた。 こいつ、逃がさない気かよ!? もう、僕をどうしようってんだよ。 徹は僕を思い切り引きつけて、顔と顔が触れそうになるぐらい近づけた。 徹の整った顔が間近に来て、僕は何故か恥ずかしくて目を逸らした。 そのまま徹は僕の耳に口を近づけた。 「先輩、それ……誘ってます?」 と、小さい声で、耳元で、囁かれた。 囁かれたことに、不覚にもドキッとしてまた顔が熱くなった気がするけど、どういう意味なのかよく分からない。 誘ってるって……僕が?いつ? 本屋のBLコーナー辺りはもうざわざわしていた。 そりゃそうだろう、どう見たってこれ……。 それに徹の顔が近くて、男相手だって分かってるけど、それでもやはり恥ずかしい。 「はっ、離せ!」 僕は渾身の力で徹の腕を振り切って本屋から飛び出した。 走って走って、とにかく走って家まで辿りついた。 もう何が何だか分からない。 image=481403855.jpg
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