こねこの一日

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「俺からは何ももらいたくない?」  唐突に巽の声の雰囲気が一変した。そして、背に廻されていた巽の手がオレの両腕を片手で拘束する。空いた方の手で巽はオレの髪を後ろから無造作に掴み下へ引いた。逃げる間も無かった。  オレは痛みと引っ張られる力に仰け反りながら慌てる。そんなに痛みは無いが、巽がその気になれば酷いこともされかねない気がした。 「そ、そんなこと無いよ」  だが、これも癪に障ってしまったようだ。 「だっていらないんでしょ?」  巽の手はオレの髪をさっきまでよりも強く引く。 「物なんかはいらない。気持ちだけでいいの」  思いだけあればそれで良い。  言葉が足りなかったのかと慌てる。 「気持ちって?」  巽の声が落ち着きを取り戻したような気がしたのだが、オレの首筋を温かく艶めかしい物が這う。微弱な刺激が神経を走った。これ以上の刺激には違う場所も反応を始めてしまいそうな気がして、オレは声を上げた。 「もうやめて巽」 「嫌だって言ったら?」 「そんな…」  情けない声がオレの喉を擦り抜ける。 「じゃあ、質問をかえるよ。聖には何をもらったの?」 「何も」  オレは必死に答える。 「本当に?」  巽は頸を傾け冷たく聞く。  信じてもらえないのかとオレは 「本当だよ」  と相槌を返す。 「そう」  巽が髪の毛を手放した。納得してくれたのだとオレは一瞬安堵した。だが腕の拘束は解かれないまま巽に捕まっている。 「巽?」  何をするつもりなのか解らない緊張感がオレの中を取り巻く。 「諒」  オレの名前を呼ぶ巽の唇が、次の瞬間にオレの首筋に甘咬みしてくる。繰り返される甘咬みに抵抗できずにいると、巽の手がオレの下腹部へ伸びて来た。オレのそれは既に硬度を増して傾き始めている。 「痛い?」  オレの首に舌を這わせて巽が囁く。その声にオレは行為を受け入れてた答えを口にしてしまった。大丈夫だよ、と。  流されているオレに巽はさらに行為をエスカレートさせた。そっとオレの恥部へ指を這わしてきたのだ。入口を探り指は艶めかしく動く。そこへ触れられる恥ずかしさにオレは悶えた。この先に巽がする事をわかっているからだ。しかし、ふとあることを思い出してしまった。巽の侵入を躊躇する愚かしいことを。
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