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目覚めると視界は明るかった。
億劫な体を動かして辺りを手で探る。なんとか眼鏡を見つけて装着が済むと、起きあがれるかどうか試してみることにした。
だが、なかなかうまくはいかない。腹筋に力を入れようとするが難しい。体中が変な感覚だった。しかし、どうにか起きてみると、自分が何も纏っていなかったことを知る。両手首には少し切れてしまったような後もあり、昨晩の情事が生々しく思い出された。
シーツを羽織ってベッドから足を降ろすと、足先に何かが触れた。何気なく拾ってみれば、腕時計のベルトのような物だった。
材質はたぶん革だろうか。見覚えがなかったので、誰かのだろうと一瞬思ったのだが、このベルトはきっとオレの物になった物だ。そう意識すると急に恥ずかしさが込み上げてきて、オレは手に持っていたそのベルトを投げ捨てる。
あのベルトは、きっと聖が昨夜の行為の時にオレを戒めて遊んだ代物だ。
溜め息を吐くと、オレはどうにかベッドから立ち上がった。ゆっくりだが歩いてみると、やはり予想通り鈍痛が響く。しかしそんなに酷い物ではなかったので安心だった。酷いときは本当に立ち上がることも困難で苦痛だ。
とにかくシャワーを浴びた方が良さそうだと思い、しわくちゃなシーツを羽織り直し、オレは部屋を後にした。
廊下の空気は薄布一枚のオレには冷たく、鳥肌が手足に広がるのを感じる。螺旋階段を転ばないように気をつけながら急いで降りた。
そっと脱衣所で羽織っていたシーツを落とす。不意に見てしまった洗面台の鏡にとんでもない姿の自分が映っていた。体の至る所に紅くマーキングされている。
「聖のばか」
呟いてみたものの、跡は消えるはずもない。諦めてオレは冷たいドアを開けて風呂場の中に駆け込んだ。慌てたようにシャワーからお湯を出し、冷えた体を温める。
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