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 タツオは窓際のテーブルに立つ3組7班を見つめた。4人とも保全部員の命令に従って、両手を上にあげている。迷彩の戦闘服を着た保全部員がスリランたちの身体検査を手早くおこなっている。武器は出てこないようだ。  後ろ手に回した手首に手錠をはめる音が、銃声のように冷たく大食堂に響いた。スリランが屈辱(くつじょく)で泣きそうな顔をした。  ひとりにつきふたりの保全部員がついて、3組7班を連行していく。タツオの目前を通るとき、スリランが歩みを遅くした。浅黒い肌をしたウルルクの少年が必死の表情でタツオの目をのぞきこんできた。  ひと言も口はきかない。スパイ容疑のかけられた自分の関係者だと、情報保全部員に思わせたくないのだろう。 (……頼む)
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