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 なにを頼まれたのかわからないが、タツオはスリランの無言のメッセージをそう受けとった。これから厳しい尋問と、ことによると拷問(ごうもん)を受けるかもしれない友人からの頼みだった。なんとしても、この依頼をやり遂げなければならない。タツオは唇(くちびる)を強く噛(か)んで、うなずき返した。スリランも浅くうなずいてくれる。 「のろのろするな。いくぞ」  ウルルクの少年の腕を抱えた保全部員が脇腹を自動小銃の尻で突いた。顔をしかめて南国生まれの生徒が去っていく。3人目のカイ・チャッタニンが叫んだ。 「ぼくたちはなにもやっていない。テロとは無関係だ。ウルルク万歳、日乃元万歳。ぼくたちは無罪だ」  静まり返った大食堂に、返事をする者はひとりもいなかった。 「黙れ」  情報保全部員がカイの顔を殴(なぐ)りつけた。ひっと女子生徒が悲鳴をあげるほど強烈な殴打だ。それでもカイは歩きながら叫ぶのを止めなかった。
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