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「ぼくたちは無実だ。ウルルク万歳、日乃元万歳」  大食堂の扉を通り抜けても、廊下の先から叫び声が流れてきた。床に伏せていた生徒たちがのろのろと起き上がってきた。やりきれないほど重苦しい空気が大食堂を満たす。同じ学校の生徒がテロリスト容疑で逮捕されたのだ。悪名高い情報保全部だ。肉を裂(さ)き、骨を削るような拷問に遭(あ)うかもしれない。クニがぼそりといった。 「あいつらが銃撃犯だなんて、とても信じらんねえ。なにかの間違いだろ」  カザンがいった。 「いい気味だ。あんなやつら、全身ぎたぎたにされてしまえばいい」  タツオは幼馴染(うらかみ)みにきいた。 「浦上くんはだいじょうぶか」  ひょろりと背の高いカザンの部下の顔を思い浮かべた。決勝戦で右太腿(みぎふともも)に貫通銃創(かんつうじゅうそう)を受けている。カザンは悔(くや)しげにいった。
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