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「似合います?」 「……」 無言で冷え切ったカフェオレを一気に飲み干す。 「あはは、先生の負けー」 三人の笑い声を無視して、二杯目を淹れるため俺は立ち上がった。 ――夏目は同世代の子に比べ、しっかりしている。 周りの空気に流されやすい年頃なのに、物事を冷静に観察し、判断する芯の強さを持っている。 三浦の言うように、生半可な気持ちで交際しているわけではないのだろう。 ちょっと過保護すぎたか……。 反省しながらマグを傾ける。 淹れたてのカフェオレは熱くて、まるで咎めるように俺の舌先を痺れさせた。 「初詣、どこに行こうか」 「鶴岡八幡宮は?」 「うーん、ちょっと遠くない?」 散々クリスマスについて騒いでいたのに話題はいつの間にか正月へ移り変わっている。 そう、今日が終わってしまえば、頭の中は大晦日と正月へシフトされるのだ。 明日には門松が街に溢れることだろう。 それまで明るかった森が急に声のトーンを落とした。 「みかんは……先輩と行くのかな」 「なっちゃん? どうだろうねー」 「はは、何散歩が中止になった犬みたいな顔してんだよ。夏目がいないと寂しいのか?」 「別にそんなんじゃ……。ただ、今まで毎年一緒に行ってたからさ……」 否定しながらも、ぶつぶつと呟くその尖った唇は明らかに拗ねている。 夏目と森の間に恋愛感情はないようだが、それでもいつも一緒にいたのだ、恋人ができたことで彼女が離れていく気がして寂しいのだろう。 「でもなっちゃんのことだからこっちの方も来ると思うよ?」 「そうかな……」 「そうだよ。彼氏ができたからって変わらないって、なっちゃんは。 今までだってそうだったじゃん」 森は長いことストローを吸ってから顔を上げた。 「そうだな……みかんだもんな」 うん、と強く頷く。 じわじわと安堵の笑みが広がっていく森の表情を見て、三浦と笠木は顔を見合わせて柔らかに微笑んだ。 ……本当に仲良いな。 微笑ましいやり取りを眺めているうちに、日々の疲れが吹き飛んだような気がした。
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