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「順調だよ。問題ない」 「まあっ、さすが私の自慢の従兄弟」 突然、小夜が抱きついてきた。 「ちょっ、小夜、離してよ」 「あ、冬馬ったら顔赤くなってるー。 ふふ、照れてるの? 本当に可愛いわねー」 嫌がる俺の頭を、目尻を下げてがしがしとかき回す。 相変わらず彼女はいくつになっても俺を子ども扱いしている。 渾身の力を使って、俺は小夜の腕から抜け出した。 「ったく、そんなことしてるといつか博兄にフラれるから」 「あら」 俺の嫌味に彼女はくすくすと肩を揺らして博兄に身を寄せた。 「博人はそんな心狭くないもんね?」 参ったように彼は笑った。 彼女より五つも年上なのに敵わないみたいだ。 小夜と彼は未だに金ぴか帽子を被っている。 まったく気にする素振りのない姿に、照れくさくて外した自分が逆に子どもみたいに感じて、再びつけようか迷いが生じる。 「順調なのは結構だけど気は抜くなよ? 油断は禁物だ」 「わかってるよ」 油断なんかしない。 親父と博兄の二人が卒業した国立大学に絶対に進むと決めてるんだ。 そしていつかは博兄みたいな教師になる。 俺がしてもらったみたいに、科学の面白さと奥深さ、舞い込んでくるあらゆる発見の持つ価値や素晴らしさを人に伝えていきたい。 親父は工学部へ来てもらいたいみたいだし、俺もちょっと前まではそうしようと考えていたけれど、もう決めた。 高校で英語を教えている母さんが喜んでいたのが救いだ。 「そうだ、冬馬」 ふいに博兄がツリーの影から何かを持ってきた。 群青色の箱に赤いリボンがかけられている。 「これ、俺と小夜からのクリスマスプレゼント」 「え……いいの?」 「ああ。開けてみろ」 「うん……」 思いがけなかったサプライズに口元を緩ませ、どきどきしながら丁寧にリボンをとく。 中から出てきたのは、防水防寒機能付きのスノーブーツだった。 これ……。 この前、博兄と参考書を買いにいったときに帰りに寄った靴屋で一目見て気に入ったやつだ。 「その顔は気に入った?」 「うん、だってこれ欲しかったやつだもん」 興奮しながら取り出し、色んな角度から見る。 「ありがとう……すごく嬉しい」 喜びを隠し切れない俺の様子を見て、二人は満足そうに笑って顔を見合わせた。
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