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「でもいいの? ついこの前の誕生日だって……」 二週間前の誕生日にCDプレーヤーをプレゼントされたばかりだ。 躊躇う俺に、博兄は眉を下げて笑った。 「遠慮なんかするな。こういうときは、ありがとう、だけでいいんだ」 大きな手を俺の頭にのせ、先ほど小夜がしたように、くしゃくしゃっと髪をかき混ぜる。 俺はスノーブーツを抱えたまま、穏やかな目をして俺の頭を撫でる博兄と優しく微笑む小夜をぼんやりと眺めた。 ――物心ついたときには既に二人は俺を弟のように可愛がってくれていた。 小夜は従姉妹だからわかるけど、博兄なんて親同士が仲良いだけでそのうえ十も歳が離れているのに、よく家に来ては幼い俺の相手になってくれた。 空の神さまが色を塗ってるだって? それは違うよ、冬馬。 過去を思い返し、笑みが浮かぶ。 キャッチボールやサッカーなどの遊びは手加減してくれた。 けれど彼は学問に関してだけは決して嘘をつかなかった。 空が青く見える原理も、七色の虹がかかる条件も、北極星の光が430年前のものである事実も―― 子どもだからと体よく神さまのせいにするわけではなく、真実を教えてくれた。 夢見させてあげればいいのに、と初めこそ小夜はあまりいい顔しなかったようだけど、子ども扱いせず、対等に向き合ってくれる彼が俺は好きだった。 博識で真摯な博兄の背中を、憧れと尊敬を抱きながらついて歩いていたのを覚えている。 少し顔を赤くさせた彼はいまだに俺の頭に手をのせている。 もう十五歳になるのに頭を撫でてきたり抱きついてきたりする二人の愛情はときに過剰で恥ずかしい。 それでも嫌な気がまったくしないのは、二人が俺を大切に想ってくれていて、そして俺もそんな二人のことが大切だからだ。 いくつになっても俺は小さな弟なんだろうな……。 少しだけ苦みを混ぜた笑顔をこぼし、俺は頷いた。 「いつもありがとう。大切にするね」 「ああ……っと、そうだ、これも」 思い出したように鞄から取り出したのは、合格祈願、と刺繍されたお守りだ。 「大学受験のときに合格に導いてくれた幸運のお守り。持っとけ」 「持っとけって……高校へはエスカレーターで上がれるんだけど」 「でもさすがに大学は受験しなきゃなんないだろ? 勉強が上手くいくようにポケットに入れておけ」 大きな手のひらにのった赤いお守りを見つめる。
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