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「私、秀さんが… みんなが思ってるような女ではないです。多分……」
夏子は思い詰めたような、それでいて微笑みを浮かべた不思議な表情で言った。
「話したくない事は話さなくていいよ」
「ううん。秀さんに…… 秀さんだから聞いて欲しいんです」
「……… 分かった」
夏子は微笑みを浮かべたまま話し出した。
「私んちってかなり貧しかったんです…… 相当かな?」
「………」
「父が全く働かない人で…
母は父の容姿に惚れて結婚したって公言するような人だったんで、生活費は全て自分のパートや内職で賄ってたんです
それでも父が毎日帰って来てくれればそれでいいって。
でも父は、私が小学校に上がった年にどこかの飲み屋の若い女の人と出て行った……」
夏子は唇を噛み、それでも微笑みを浮かべたまま続けた。
「母はそれでも父を恨んではいないと言っていました。モテる人だから好きになったって……
ただ、『お前は私のような人生は送るな』って
『まだまだ女の人生は男次第だ』って
『お前は天下を取れるような男を見つけるんだよ』って」
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