『幸福の時間』

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俺は一年前まで神奈川県の某中堅工作機械メーカーで働いていた。 高校卒業と同時に旋盤工として就職し、頭は良い方ではないが腕には自信があった。 同僚とも楽しくやっていたし、上司からも可愛がられていたと思う。 ところが、1980年のオイルショックの煽りを受けて勤め先は倒産。 「まったく二代目なんざぁお気楽でいいよなぁ」 「先代の社長の時代は良かったなぁ~」 何度そんな台詞を聞いただろうか? 社員の誰もが二代目社長の放漫経営を危惧していたのだが…… だが俺にも生活がある。 ボヤいてばかりはいられない。 ありがたい事に当時の係長から、 「幼馴染みが長野で小さな鉄工場をやってるんだが……」 という事で紹介され、狭い社宅を出て長野県の古い一軒家に移り住んだんだ。 .
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