あやかしの月の夜に

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マチルダが男から離れる。 「あんたは……そんな女を守れるのか? 私があんたの主のところに行けば……間違いなく争いが起きる」 男の身体は震えている。 「必ず私を奪おうと……男たちはあんたの主のところに攻め入り、女たちは私を殺そうと攻めてくる」 黙ったままの男に背を向け、マチルダは歩き出した。 誰も追う者は居ない。 「まさに“傾国の魔女”やな」 「姉さん、それ恥ずかしいからやめて」 苦笑するマチルダにもぁらすがため息を吐く。 「あんたの色香に狂う男ばかりやないとは思うけどな。あんたに純情尽くす男も中には居るで?」 だから―― 「……嫌なんだよ」 とマチルダは笑う。 「私は淫売でいい。淫売って言われてる方が性にあってる」 淫売だと思えば、諦めもつくだろう。 悪い女に引っ掛かったと、諦めもつく。 いつか可愛い女を見つけて――幸せに暮らせる。 「だから、男はそんな簡単なものやないし……」
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