あやかしの月の夜に

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冗談とも本気とも取れる会話をする二人の女の正体は。 東洋の魔女と呼ばれ、妖婦、毒婦とも呼ばれ――その色香で男たちの運命を狂わせるファム・ファタルと恐れられている魔女マチルダと。 世界を統べる女王として、魔女たちの頂点に立ち、魔族すら尊敬すると言われている大魔女もぁらす。 本来ならば――下等魔族が近づける存在ではない。 その名を聞いただけで、魔族は近づくことを躊躇う。 ましてや、襲い、手込めにしようなどあり得ない。 けれども、この日の夜は違っていた。 「ええい!! お前たち!! 退け!! 俺が出る!!」 無数の男たち――魔族たちの中から一人の魔族が二人の前に立ちはだかった。 「おうおう、大将が出てきたで、マチ子」 楽しそうに大魔女が笑う。 「お初にお目にかかる。大魔女もぁらす殿と妖婦マチルダ殿。俺の名は……」 「ああ、いい。いい。名前とかいいから、コイツらを連れてとっとと帰ってよ」 マチルダがめんどくさそうにそう言った。
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