あやかしの月の夜に

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その魔力に当てられて、魔族たちが竦み上がる。 誰も動ける者は居ない。 「バカが……。できもせんことを簡単に口にするんじゃないよ」 マチルダがニヤリと笑う。 その笑顔はまさに妖艶と言った形容がよく似合う。 「……興が冷めた。もぁ姉さん。行こ、慶ちゃん待ってんでしょ?」 「ああ……」 二人の魔女は魔族たちに背を向け、立ち去ろうと歩き出した。 「……っ!! 待ってくれ!!」 二人の前に男が立ちはだかった。 そうして勢いよく土下座する。 「頼む!! マチルダ殿!! 我が主の願い……我が主の命を救ってくれ!! 主が貴女を全てにしているように……俺は主が全てなんだ!!」 男の悲痛な叫びが月明かりの下、響き渡る。 男を見ながら、マチルダが哀しそうな顔をした。 「あんたに……つまらない昔の話を教えてあげる」 月明かりが静かにマチルダを照らす。 「ある男が……一人の少女に恋をしたの。少女も男に恋をした。いわば両想い」
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