13/17
前へ
/224ページ
次へ
「独り言?」 「うん。なんか巻き込んじゃったみたいでごめんね」 「……」 突然、瓶が飛んできてパニックになったとはいえ、恥ずかしい間違いだと柚月は頬を赤くした。 「ちょっと休んでこうか。俺すげー喉乾いたー。自販機ないかな」 「あ、向こうにありますよ」 「なんか飲む?」 「飲み物持ってます」 彼が風にあたりたいというから海沿いにあるベンチに腰をかけた。日が傾きかけていて、レインボーブリッジやビル群が黒く染まっていく。 「にしても酒かよ」と彼はサイドの髪を鼻に近づけ顔をしかめた。 少し濡れていたのは汗だけではなく、さっき投げられた瓶のせいもあるようだった。そこでさっき庇ってくれたことを思い出し、 「すみません。私のせいで。拭くのハンカチくらいしかないんですけど」 と慌てて差し出す。 「汚れちゃうよ」 「洗えば大丈夫ですから」と言うと「じゃあ遠慮なく」と受け取った。 ハンカチを広げると、本当に遠慮なくお風呂上りに髪の毛を拭くようにわしわしこする。柚月は犬みたいに見えて微笑ましくなった。 その視線に気が付いて 「何?」 「あ、いや。犬みたいで可愛いなって思って」 「え、犬? 犬?」と目をぱちくりする。
/224ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加