ひとりだと思っていた君へ

１

家に帰り、鞄を置いて着替える。
平たい透明のボウルを取り出し水を入れる。
部屋に飾っていた少し元気がなくなった花をカットしそこに浮かべた。
湖に花が浮かんでいるようで美しく、しばらく眺めていた。

生きていると思いがけないこと出会いって沢山ある。そう考えて、柚月はありがとうと自然と口にしていた。

それにしてもココナって私の名前じゃないし。なんだか不思議な人だったなと思い出すとくすりと笑ってしまう。

そこでカーテンを閉め忘れていたことを思い出し、立ち上がる。レースのカーテンに手をかけてから、一度空気を入れかえるかと窓を開ける。
細い月が見えた。

それにしても咄嗟だとはいえ、最後の一言には自分でも驚いた。初めて会って打ち解けてもいない人にバイト先に来てくださいなんて、普段だったら絶対言えない。

また会いたい思いが湧いてきて、抑えられなかった。そういう気持ちは初めてで、私にもそういう感情があるんだなと噛みしめると心がむずむずと照れ臭い。

だけど何かに突き動かされたような感覚もあり、あれは私なのかなと窓にうっすら映る自分の顔を見つめながら柚月は考えていた。