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「……近ぇよ」
「あ、無事に身体に入ってるね。良かった良かった」
ん?…あぁ、確かに声が…。
「ってか服は?」
俺が見たときは着てなかったはずの、丈が太ももまである黒のコートに灰色のズボン。
編み上げの黒色のタクティクスブーツに、青のインナーという出で立ちをしていた。
「あぁ、さっきパパッと着せちゃったよ。裸じゃ困るでしょ?」
「そりゃそうだが…ん?」
そのとき、視界の端に妙なモノが映った。
そちらに視線を向け、それをマジマジと見てみる。
それは、刀だった。
流麗に緩く反り返った闇色の刃に、刃に平行に填められた平べったい鍔。
紅く装飾が施された柄と、横には申し訳程度に金で飾られている鞘が置かれている。
「……何コレ」
「え?君もわからないの?いつの間にか置いてあったんだけど…」
「いや知ら―――」
「知らない」
そう言いかけたとき、先ほどの出来事を思い出す。
あの、妙にノイズのかかった声。
変な部屋で聞こえた謎の声を。
“正解ダ。アン時言ったろうガ、契約完了ッテ”
「…月紅って言ったか?」
声は刀から聞こえた。
俺は闇色の刀を手に取る。
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