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茶藤千雪はなにかの気配を感じたが、揺れるカーテンを見て、
「あら、いけない。サッシが開けっ放しだったわ」
まさか誰かが開けていったとは思わず、サッシを閉めた。
と、足元に落ちていた500円硬貨に気づく。
「あれ? なんでこんなところに……」
不審に思いつつも、あまり深くは考えず、リビング横のテレビ台の中にある、百万円貯まる貯金箱に入れた。
501号室の真下――101号室の庭先の地面に人間の形の窪みを作ったルケルケ・7・トーは、全身の痛みに耐えながら、這うような足取りで庭を出た。
リビングのテーブルでちょうど晩ごはんを食べていた、101号室の住人でレジデンス茜台の管理人・種田イネは、ルケルケ・7・トーが落ちてきてから庭を出ていくまでの一部始終を目撃していた。
老眼鏡をずらし、
「あらあ……伊藤さんは、ほんとに落ちてくるんだねぇ……」
梅干しの種をプイと口から皿の上に出すと、さほど驚いたふうもなく真顔でつぶやいた。
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