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4年前。
守れなかった。約束も。彼女も。
医師になったというのに――!
「んん……」
緒方忍の耳に、女の吐息がかかり、彼は、一瞬過った胸を引き裂くような記憶を振り切った。
ブラインドの隙間から漏れる青白い満月の光に、幻想的に映える女の白い肌が目に眩しかった。
絹のようなその肌を、忍の、指の長いしなやかな手が愛撫する。
フルッと震えた辻綾子は、肩を竦め、快楽に喘ぐ吐息を漏らした。
「あ……はっん……忍く……あんっ」
嬌声の合間に名を呼ばれた忍は彼女の耳元にフッと息を吹きかけるように囁いた。
「綾子先生、まだですよ」
それはほんの少し意地悪な響きを含む。
先から焦らしてばかりの忍に堪らなくなった綾子は彼の顔を両手で挟んだ。
「もう……っ、じらさないで……」
そう言い、彼女は忍の唇にほんの少し乱暴なキスを落とした――。
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