プロローグ

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「美羽……」 低く柔らかく、甘く。 心地よく響くその声は、私の芯に届き浸透し……心を、カラダを……痺れさせる。 麻痺させる――。 抱いて、抱かれて溺れてく。 繋がる手、絡める指は、私の中に眠っていた遠い記憶を呼び覚ました。 ねえお兄さん……。 その手から伝わる温もりには……優しさには……どんな想いが込められているの? 私への……負い目……? それとも――。 彼の本当の心がどこにあるのか、分からなかった。 それが、こんなに、苦しいなんて。 触れて、抱きしめて、指を絡めて。 こんなに傍にいるのに、どうしてこんなに貴方の姿は遠いの――。
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