ラフマニノフから

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 客席でコンクール主催側のスタッフと打ち合わせをしていた指揮者がステージ上に登ってくると颯爽とした仕草で指揮台に上がった。 無秩序に鳴っていた管楽器や弦楽器の音がパタリと止む。 「では、次のラフマニノフ・コンチェルト第2番は、午前中の合わせで言った注意点によく留意してお願いします。 ファイナリスト達は皆、本番を明日に控えナーバスになっている。 限られた時間を有効に使えるよう協力お願いします」  指揮者はそれだけ言うと、客席を振り返った。 「緒方美羽さん、どうぞ」 「はい」  本番と違い、照明の明るい光が溢れる客席の前方真ん中で一人の少女が立ち上がった。  胸ポケットに校章と思しきエンブレムの入った濃紺のブレザーにリボン、チェック柄のミニスカートという制服姿。 色白でクリッとした大きな目が印象的な愛らしい、まだあどけなさが残る少女だった。  オーケストラの団員達は皆、一様に息を呑んだ。 ――この子が、ラフマニノフを弾くのか!?  ラフマニノフのピアノコンチェルト第2番は、重厚でダイナミック、かつ色気を感じさせる流麗甘美なメロディーが常に流れる、そんな曲だ。
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