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「琴も、彼に話したいことがあるんじゃないの? だから、ここに来たかったんだろ?」
「……。」
「パパは向かいのカフェにいるから、終わったらおいで。それから、一ノ瀬さんに迷惑かけないようにね。」
「……うん。」
パパはまるで、わたしの気持ちを知ってくれているように、そう言った。
その気遣いに乗せられて、わたしとコウちゃんは困ったように視線を合わせる。
「……ここは人目に付くから、店の裏で話そうか。」
「うん……。」
すると、コウちゃんは中の人に何かを告げて、帽子とサロンと外して、わたしを店の裏に連れて行った。
昨日と同じように、優しく手を握りしめながら。
日陰になっていた段差の上に、肩を並べて座る。
キスしたときと同じ距離感に、胸が勝手にドキドキし始めてしまう。
期待しているわけじゃないのに……。
「さっき……何、言いかけたの?」
そう問いかけてくる口調は、心を包み込んでくれるみたいに温かい。
前もって連絡もせずに来てしまったことを、少しは咎められると思ったのに。
コウちゃんはただ、わたしの手を優しく握ってくれているだけだ。
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