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そんな言葉、反則だろ……。
しかも、こんなシチュエーションで。
部屋の中でふたりきり、家には他に誰もいない。
目の前には、無防備でいる大好きな女の子。
俺だってまだ22歳の普通の男なんだから、この状況で我慢できるほど大人ではない。
小さなテーブル越しにある、ぷっくりと可愛らしいサクランボのような、ピンク色の唇。
ここで俺が行動を起こせば、前に進む起爆剤になるだろうか。
その長い睫毛も、チワワのように可愛い奥二重の目も。
すぐに赤く染まるリンゴみたいな頬も小さな鼻も、ふたつに結ばれた、少し茶色がかった長い髪も。
全部、俺のものにしてしまいたい。
他の男なんかには渡したくない。
触れたい……。
でも、触れられないのは……臆病な性分のせい。
「コウちゃん……どうか、したの?」
「……ううん、何でもない。」
世の中には、簡単に女の子に手を出す男も沢山いるけれど。
俺にはできない。
本当に好きだから、壊せない関係。
あと一歩の勇気が踏み出せない。
この恋にも、目の前に差し出された大きな夢にも。
でも、決断は迫られている。
フランソワの話は、今週中には返事をしないといけないのだから。
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