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「……あの話、決めてくれた?」
「ごめん、まだ……。」
「ハァ、男だったらもっと潔く決めなさいよ!」
数日後、いつものカフェに呼び出された。
決心をつけられないでいる俺に、梅からのキツイ言葉が浴びせられる。
眉間にしわを寄せた彼女からの、溜息交じりのひとこと。
「こんなんだったら……聖のことなんて、放っておくんだった。」
「……。」
「本当はさ……私が行きたかったんだよ。本店に。」
「え……?」
それは初耳だったけれども、確かに不自然に思っていた点だった。
野心家の梅ならば、俺に話を譲ることなどせずに、自分から進んでその道を選んだはずなのにと。
彼女は、そういう積極的な行動力を持っている人だから。
しかしその反面、冷静な考えを持っている人でもある。
「でも……今の私じゃ、まだ無理だと思う。」
「そんなことないだろ。」
「そんなことあるよ。自分の実力は、自分がいちばんわかってるつもり。それに、今の店でも学びたいことが、まだ沢山あるし。」
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