第4話 すれちがう恋と、夢

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. 曲がりなりにも2年近く付き合っていた相手だ。 俺の性格なんて、お見通し。 そういう点では、今の梅との関係は、恋人同士だった頃よりも気楽なものだと思う。 「彼女さ、パティシエになりたいって言ってくれた。」 「へぇ……。」 「俺みたいに、ケーキを作ってみたいって。嬉しかったのに……素直に、喜べなかった。 俺は尊敬されるようなこと、なにひとつしていないから。」 琴ちゃんの純粋な憧れ。 それは父さんに向けられるべきものであり、俺に対してのものではない。 俺はただ、目の前に敷かれていたレールの上を歩き続けていただけだ。 「梅の、言うとおりだと思う。この先、彼女が同じ道を進むようになれば、きっと俺に対する想いは変わってしまう。 今は尊敬してくれていても、いつかは先を越されてしまうだろうって。」 「……。」 「それだけは……嫌なんだ。 馬鹿みたいだけれど、彼女の憧れのままでいたいんだ。」 何もしないまま、彼女がどんどん立派なパティシエになるのを、指をくわえて見ているなんて絶対に嫌だ。 プライドなんて、とうの昔に捨ててしまったけれど、これだけはどうしても譲れない。 珍しく熱く語ってしまった俺に、梅は小さく微笑みかけてくれた。 .
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