第4話 すれちがう恋と、夢

24/30

3876人が本棚に入れています
本棚に追加
/226ページ
. 「……もう、答え出ているじゃん。」 「え?」 「やっぱり、聖はパリに行くべきだよ。それで……色んなことを勉強して、彼女に伝えてあげるべきだよ。彼女の未来のために。」 「彼女の……未来?」 「彼女がパティシエになりたいって言うのなら、尚更だよ。」 確かに、そうなんだ。 ずっと断ろうと思っていたのに、いつの間にか心は動かされていた。 俺一人では、気づけずに見過ごしてしまうところだった。 今のことしか考えていなかった俺に、これから先のことを考えさせてくれた人たちの言葉たち。 「前向きに考えたらさ、今ここで一緒にいることよりも、この先も一緒にいたいって気持ちのほうが大切なんじゃないの?」 大切にしたいものは沢山ある。 父さんの夢、琴ちゃんの夢。 俺自身が思い描いていた憧れ。 そして……彼女を想う、この恋心。 全てを切り離して考えていたけれど、実はそうではない。 全てはひとつのベクトルへと向いていることに、漸く気付いた。 「……あと1日だけ、時間をくれないか?」 「え?」 「明日必ず、返事をする。」 .
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3876人が本棚に入れています
本棚に追加